未解決事件「桃月忌事件」の真相を追う

【独自取材】雑誌記者・佐藤卓郎

【京都・実地】写真と現場の照合|雑誌記者・佐藤卓郎

竹林の奥に眠る廃社
暖かくなったとはいえ、日没の足音はまだ早い。
JR藤森駅を降りた俺たちは、残された光を追いかけるようにして神社を目指した。

 

住宅街を抜け、府道35号線沿いを20分ほど歩く。
すると、静まり返った森の麓に、大岩神社の参道鳥居が姿を現した。
「竹の小径」と呼ばれるその参道へ、俺たちは足を踏み入れる。

 

 

かつての賑わいはどこへ消えたのか。

荒廃が進んだ参道を進むと、鬱蒼とした木立の中に、澱んだ色の池が現れた。
聞けば、明智光秀が敗走する際、この池に武具を捨てたという伝説があるらしい。
何気ない風景の裏側に、歴史の血生臭い逸話が潜んでいる――いかにも京都らしいその影にうすら寒さを覚えながら、先を急いだ。

 

 


パンドラの箱の蓋

本殿へ至る道程には、小さな祠がいくつも点在している。
俺たちが知らないだけで、ここにはかつて、確かに多くの人々の切実な祈りが捧げられていたのだろう。
やはり、母親たちがわざわざこの場所を訪れたのには、偶然では片付けられない理由があるはずだ。

 

 


目的地が近づいたとき、突如として視界に異形な建造物が飛び込んできた。
著名な日本画家が寄贈したという、幾何学的な彫刻が施された石鳥居だ。
荒れ果てた森の中で、そこだけが周囲を拒絶するように屹立している。
その信仰の証は、俺にはまるで「パンドラの箱の蓋」のように見えた。

 

深く息を吐き、その鳥居をくぐる。
見上げた先に、本殿が静かに佇んでいた。

 

 

誓いの柏手
一歩、また一歩。
過去と向き合う覚悟を刻むように、石段を登る。

「……ここだ。間違いない」

手元にある10年前の写真と、目の前の景色を重ね合わせる。
あの日、母親と妹は、あの謎の男と共にこの場所に立っていた。

 

 

 

朽ちかけた本殿には、かつての賑わいが微かに残像のように漂っていた。
失われた信仰の残骸が、あの日失った家族の笑顔と重なり、胸を締め付ける。

正直に言えば、一刻も早くこの場を立ち去りたかった。
だが、もしここにまだ神が宿っているのだとしたら、誓わずにはいられなかった。

「必ず真実を見つけ出し、あの日を終わらせます」

静寂の中に、柏手の音が響く。
祝詞を捧げる俺の背中を、冷たい風が通り抜けていった。

 

 


【追記:記者の独白】

この神社で、俺はある人物に出会った。

その邂逅(かいこう)は、俺がこれまで一度も触れることのなかった「家族の秘密」を暴く、決定的なきっかけとなった。

 

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